デジタルエコノミーの罠

久しぶりの投稿。じつに興味深く、様々考えさせられた本の紹介です。

ネットがもたらす希望に満ちた新しい民主主義の在り方、創発民主制への期待、ネットが世界を変えていくワクワク感、現実にはなかなか上手くいかないことも多そうだけれど、まだ希望はあるのだろうと、そんなことを考えていた自分の認識の甘さをことごとく破壊した一冊でした。

様々アテンションエコノミー:関心の経済がもたらす負の一面を現した言説は多いのですけれども、本書は理論モデルと実際のデータによって、ファクトベースで現実を描き出します。

(米国の地方新聞)ローカルメディアの例を挙げ、訳者曰く「もっと真面目にネットに取り組み、読み込みの遅延をなくしてA/Bテストを少しでも導入し、見出しに今の100倍は力を入れろ、紙や電波メディアのおまけでWebができると思うな。さらにウェブの現実を踏まえないインチキ論者に耳を貸すな…」と極めて具体的な提案をしている反面、オンラインの関心の経済がもたらしたGAFAの寡占と民主主義へのダメージ…その実態を明らかにしつつ、そこに対しての具体的な処方箋は、規制の在り方などを匂わしてはいるものの、ローカルメディアのような具体的な提示は残念ながらそれほど明確には提示されていませんでした。
そこは、物足りないと言うよりもこれからの議論であるし、何を捨てその代わりに何を得るのか我々の選択が問われる、のだろうなと思いました。

いわゆるインターネットの幻想は捨て、現実を見つめて対応可能な対策を考える、今日と未来の間に、居る僕らの指針、考えるベースとなるはず。超おすすめ。