Manus買収で考えたこと

Manus買収で考えたこと
manus-Meta Apple Gemini

2025年12月29日(米国時間、日本時間では30日)、AIエージェント開発のManusがMetaへの合流(事実上の買収)を発表した。

正直、最初は驚いた。あのManusが、もう買収?
でも少し考えてみると、「ああ、これ最初からそういう設計だったんじゃないか」と思えてきた。
シリコンバレーでは最初からExitを設計に組み込むスタートアップは珍しくないし…

Manusは今年3月にローンチし、わずか8ヶ月で年間売上換算1億ドル(約150億円)に到達したと宣言している。
このスピード自体が例外的だが、振り返ってみると、彼らの選択の多くが「独立成長」だけでなく「将来の統合・買収」をも視野に入れたものだったとしたらどうだろう。

例えば、以下の点は結果的に大手テック企業にとって扱いやすい条件を整えていたようにも見える。

  • 中国発・シンガポール移転 —— 米国企業が買収しやすい法人構造
  • Benchmarkからの出資 —— シリコンバレー文脈での信頼シグナル
  • 招待制ローンチ —— 初期の注目度を最大化するための手法
  • 自前の基盤モデルを持たない設計 —— 特定モデルに依存しない柔軟性

少なくとも結果としてManusは、「AIエージェントをエンドユーザーに直接届ける会社」というより、「AIエージェントの能力そのものを、より大きなプラットフォームに組み込ませる会社」として成功した。

普通に考えれば、自前のLLMを持たないのは弱みだ。API費用がかさむし、差別化も難しい。Manusは、これを逆手に取った。
「うちはどのLLMとも組めます。御社のLlamaと組み合わせれば、御社のユーザーに最高のエージェント体験を提供できます」

これは買収提案そのものだ。Metaからすれば、Llamaという「脳」はあるが、それを使いこなす「手足」のノウハウが足りなかった。Manusはその欠けたピースとして、自らを売り込んだ。創業者 Xiao Hong(肖弘)は1993年生まれ、買収後はMeta VPに就任するという。会社だけでなく、自分自身も「パッケージ」として、売ることになった。😉

この買収が示しているのは、エージェント専業で独立して生き残るのは難しいということだろう。

    • 飛び抜けて優秀なら → 買収される(Manusパターン)
    • そうでなければ → 既存サービス・アプリの一機能として吸収される

どちらかに転ぶ、「中間」がない。LLMを持つ巨人に買われるか、おまけとして繋がるか。Manusは最初からこの構造を見抜いていて、だからこそ「買われる側として最高の条件」を整えることに全振りしたのではないか。実際、エージェント専業のスタートアップが大手に人材ごと吸収されるケースは、今年すでに起きている。会社の看板は残っても、中身が抜かれれば同じことだ。

買う側の巨人たちも、それぞれのやり方で動いている。
Appleは自前の巨大LLM開発競争からは距離を置き、GoogleのGeminiと提携する道を選んだ。彼らは「脳」をアウトソースしてでも、iPhoneという「手足」の支配権は渡さない。
一方、MetaはManusを買収し、「脳(Llama)」と「手足(エージェント)」を垂直統合した。
アプローチは違うが、どちらも目指しているのは同じだ。AIに「委任」できる体験をユーザーに届けること。

ちなみに、すべてのプレイヤーが垂直統合や囲い込みに向かっているわけではない。Anthropicは「MCP(Model Context Protocol)」という、エージェントが様々なツールやサービスと連携するための共通規格を推進している。自分たちがエージェントを作るのではなく、エージェントたちが繋がる「土台」を握るという戦略。囲い込みか、標準規格か。この構図、昔の通信業界でも何度も見た景色ではある。

2026年、エージェントは独立した存在ではなく、巨人たちのエコシステムに組み込まれた「機能」になっていく。Manusはその流れを、誰よりも早く読んでいた、いや、最初から、その結末に自分たちを合わせにいったのだ。