トランプ政権の無敵ロジック

ベネズエラ空爆で考えたこと

トランプ政権の無敵ロジック
米国法で国際秩序を破壊する

2026年1月3日、米国がベネズエラを空爆し、現職大統領マドゥロを拘束してニューヨークに連行したというとんでもない事件。
トランプ政権いわく、これは「戦争」ではなく「法執行活動」だそうだ。
この件は山本一郎氏の整理記事が詳しい。 → それ、戦争じゃなくて逮捕です


彼らの主張を整理すると…

  1. マドゥロは「大統領」ではなく「麻薬カルテルの首領」→ 犯罪主体
  2. 米国内で起訴済み → 国内法として起訴
  3. 「逮捕」のために空爆した → 越境的に武力を使って排除・拘束する
  4. 戦争じゃないから議会承認は不要 → 戦争ではなく法執行(警察行為)

要するに「米国が犯罪者だと言えば、世界中どこでも空爆して連れてこられる」ことを、理屈の上では可能にしてしまう主張だ。国際法? うちの国内法で処理するから関係ない。この考え方でいけばどんな武力行使も「戦争」ではなくなる。


試しに、この理屈を極端な例に当てはめてみる。宣戦布告が遅れたと批判された真珠湾攻撃だ。

  1. 米国は対日石油禁輸で日本国民を飢餓に追い込もうとした経済テロ国家である。
  2. ルーズベルト政権は違法な戦争挑発政権であり、日本国内法により起訴済み。
  3. 真珠湾攻撃は犯罪政権排除を目的とした警察行為である。
  4. ゆえに、警察行為であるから、宣戦布告は不要である。

問題外の無理筋だが…今回の米国の論理も同じ構造だ。
米国はこれまで、イラン、北朝鮮、リビア、ベネズエラを「ならず者国家(rogue state)」と呼んできた。国際法を無視する国、という意味で。しかし主権国家を空爆して現職大統領を(国内法を根拠に)拉致するというのは、「ならず者」の定義すら超えている。


この前例を他の大国が使わない理由がない。ロシアは「ウクライナ政府はネオナチだ、国内法で処理する」と言える。中国は「台湾は分離主義テロ組織だ」と言えるようになる。

そして、その矛先は日本にも向きうる。もし日本の自動車メーカーや製鉄会社が、米国の国益を著しく害する『経済テロ組織』と認定されたらどうなるだろう。
CEOが『米国法に違反した犯罪者』として指名手配され、横田基地から飛び立ったオスプレイが、六本木のオフィスに強行着陸して身柄を拘束する。 日本政府が抗議しても、ホワイトハウスはこう答えるだろう。
『これは日米戦争ではない。貴国の国内にいる犯罪者を、わが国の警察権で逮捕しただけだ』と。
ベネズエラで起きたことは、明日の丸の内で起きても不思議ではない。このロジックは無敵なのだ。

戦後80年かけて積み上げてきた「武力による現状変更はしない」という建前。米国自身、何度も破ってきたが、それでも建前だけは通してきた。議会への報告、国際社会への説明、占領後の「民主化」という名目…汚い手を使いながらも、体裁は整えてきたはずだ。

今回、その建前すら捨てた。その代償を払うのは、誰だろうか…。